卵の「成熟」とは?

こんにちは、培養士のS原です。

今回は卵の「成熟」について簡単に解説をしたいと思います。といいますのも、体外受精をされた患者さまへの受精確認のご連絡の際、「採卵個数」「成熟個数」「受精個数」と色々あってややこしい!と思われてる方も多いのではないかと感じておりまして…😅

 

まず、採卵をして卵巣から卵子を取り出します。この取り出した卵子の数が「採卵個数」になります。採卵した卵子は、未熟卵成熟卵の2種類あります。(変性卵も含めれば3種類です)

 

では、未熟卵と成熟卵の違いは何なのか?というのは、おおざっぱに言いますと「受精の準備ができていない卵」と「受精の準備ができている卵」になります。

未熟卵、成熟卵の違いは見た目でわかります。

1つの核が見えているのがGV、何もないのがMⅠ、極体という小さな細胞が出ている状態がMⅡ、となります。GVとMⅠが未熟卵、MⅡが成熟卵です。

GVが発育してMⅠになり、さらに発育してMⅡになります。この発育にはホルモンが関わっています。

通常、自然に排卵される卵子は成熟している状態、つまりMⅡ卵子です。

「受精の準備ができている」とはどういうことなのかというと、まず人間(動物)の細胞は一つ一つ自分自身の遺伝子情報を持っています。この遺伝子情報を「人間としての設計図」とします。GV、MⅠ卵子はこの設計図がまだ自分のもの一つだけしかもっていません。受精をするための準備(成熟)が進むと、設計図を半分に割ってその半分を持つようになります。半分の設計図を持ったMⅡ卵子=受精の準備ができている状態、となります。(このあたりを詳しく知りたい方は「減数分裂」で調べてみてください)

同じく男性も半分の設計図を持った精子をつくりだし、卵子側の半分の設計図と精子側の半分の設計図をくっつけて新しい1つの設計図がうまれます。これが受精です。受精した卵は「胚」といい、細胞分裂を繰り返して育っていきます。こうしてお父さんとお母さん、それぞれから遺伝子情報を半分ずつ受け継いだ子どもが生まれます。

つまり、未熟な卵子だと設計図が半分ではないので精子が半分の設計図を持ってきてもくっつけることができないのです。完成した設計図を卵子がもっているからいいのでは?と考えることもできますが、そうなると細胞周期とか単為発生とかクローンとかまたややこしい話になるので今回は単純に考えてください😅

 

まとめますと、採卵で卵巣から採取した「採卵個数」のうち、受精できる状態であるものが「成熟卵数」で、さらに実際に受精をしたものが「受精卵数」になります。

見た目で成熟しているかわかる、と書きましたが採卵直後に成熟しているかわかるのか?というとまたそうではないのです。

採卵直後の卵子は周りに細かい細胞がたくさんついていて、言うなればめちゃくちゃ着込んでいてモッコモコになっていて素肌はほぼ見えない状態です。その周りの細胞(服)を剥いで(脱がして)やっと上の図の写真のような姿が見えます。ですので、採卵直後は成熟しているかははっきりと判断できないのです…。

成熟の判定は受精方法「媒精」と「顕微授精」でまた違ってくるのですが、これはまた次回お話ししますね。

培養士に聞きたいことがあれば気軽にご質問くださいね😊