卵子凍結の功罪
巷では芸能人がSNS上で卵子凍結を公表したことで、社会的卵子凍結の話題で盛り上がっていますが、卵子凍結は医学的適応として、がん・生殖の領域で以前より行われていましたし、体外受精の現場でも卵子は採取できたのに精子が採取できなかったり、いなかったために、採取した卵子を一旦凍結して、後日採取した精子や精巣内の精子を採取した後に顕微授精で受精、妊娠ということも時々生じており、凍結卵子での妊娠は技術的には問題なく行われていました。ただ結果が良好なのは若い女性の場合で、30代半ばを超えた女性では通常の妊孕性と同じく年齢の要因が極めて大きく、卵子を凍結できたとして、その数年後に凍結卵子を解かして受精させてもその受精卵が着床して妊娠に結びつく可能性は年齢に従いどんどん低くなって行きます。とにかく卵子凍結においても年齢が進めば進むほど医療が介入しても妊娠成立は難しくなっていくのです。よく「お守りとしての安心感が得られる」と言われますが、年齢が高かったり、凍結可能な卵子数が少ない場合は、本当にお守り程度の効能しかありません。東京都では社会的卵子凍結への助成がスタートしましたが、凍結した後の毎年の更新料金も含めると助成額は半分にも足りず、採卵凍結時点とその後の経済力も必要になります。仕事をバリバリやっていてキャリア形成の真っ只中にいる若くて卵巣予備能が充分な女性にこそ一番適している方法なのかもしれませんね。本筋は妊孕性が保たれている若いうちに自然で妊娠して出産・子育てなのですが、現代の社会はそういう視点へ目を向けてくれないのが現実です。やはり社会が変わらないとですね。