「自然」が常に良いとは限らない
近年、「自然」という言葉が様多くの商品やサービス、医療に関する宣伝までに頻繁に使われるようになっています。「自然素材」「自然由来」「自然周期」「より自然に近い」など、一見すると健康的で安全なイメージを与えますが、これらの宣伝文句が必ずしも正しくないことに注意が必要です。そもそも自然由来のものが必ず安全とは限りません。自然界には多くの有毒物質やアレルゲンが存在します。一方で、科学的に合成された物質が安全である場合も多く、自然界には存在しない多くの医薬品が人体に有益な効果をもたらしています。体外受精や顕微授精などの生殖補助医療においても「自然」という言葉を頻繁に目にしますが、排卵誘発の段階だけであって、実際の体外受精の全ての過程で自然ではない人工的な手段が用いられています。また「自然」というラベルは消費者や患者に誤解を与えることがあります。多くの場合、「自然」とは何かが曖昧で、法的な基準も存在しないため、企業や医療機関がこの言葉をマーケティング手段として利用し、実質的には「自然」ではない製品や医療を提供していることがあります。消費者や患者は、「自然」という言葉に惑わされず、「自然」が必ずしも良いとは限らないことを理解する必要があります。消費者、患者として、製品や医療行為の具体的な内容や製造過程、治療過程を確認し、実際の価値や安全性をきちんと評価して情報に基づいた選択をすることが重要です。宣伝文句に惑わされず、科学的な知識と批判的な思考を持つことが、真に良い選択をするための鍵となるのではないでしょうか。(ラ・シゴーニュ寄稿文)